第13章「歴史に残したい静岡の名酒たち その4」
今や吟醸酒王国とも呼ばれるようになった静岡県。実は吟醸酒ばかりが優秀であるのではありません。普通酒(一般酒)から本醸造、純米においてもレベルの高さは日本最高ランクであります。今回はそんな静岡の本醸造と純米についてであります。
静岡県産酒の本醸造(特別本醸造を含む)と純米(特別純米酒を含む)とその上のクラスである吟醸酒(大吟醸を含む)や純米吟醸酒(純米大吟醸を含む)と比べますと、その酒質の差は他県の差よりも少ないです。吟醸酒も吟醸酒以外も同様に丁寧に造られているからです。
これは生産量がそれほど多くないことも物理的な理由としてありますが、その前に精神論的なことがあるのです。
静岡県が清酒の名産地と呼ばれるようになったのは、大吟醸を主体とした全国新酒鑑評会での成績の高さからです。
大吟醸などの出品酒類だけを丁寧に上質に造っていればいいのか?
例えば大吟醸だけを造って販売した場合、経営はうまくいくのか?それはNOであります。
生産量、作業量、人件費などもろもろの要素を考えますと、大吟醸だけではなく、その他の特定名称酒も造って販売する必要があります。
大吟醸だけで、鑑評会の成績だけで引っ張っていくのではなく、お客様が口にされやすい本醸造や純米酒も高品質にする。そうでなければ駄目なんだ、の精神論があります。
これは主(河村傳兵衛氏)が口が酸っぱくなるくらいに蔵元達に伝えていたこと。主の指導に沿い、大吟醸と本醸造の差を少なくしてきたことが、静岡県を清酒の名産地と認知させたのです。
では、実際にどんな取り組みがあったのでしょうか?特別本醸造は精米歩合が60%以下と決められています。他県の蔵元が精米歩合が60%で特別本醸造としているなら、うちは55%でいこう。いやいや、うちは50%でも特別本醸造でいく、みたいな。
そんな酒の代表が「開運 特吟」であります。
また、精米歩合55%は純米吟醸酒でも通るが、うちはその下の特別純米酒でもなく、ただの純米酒でいくさ、みたいな。それが2001年くらいまで造られ、美味しんぼにも登場した「喜久醉 純米55」。
この他にもこのような流れに乗った蔵元がありました。
「開運 特吟」は今でも製造販売されている特別本醸造です。今回はこの手のお酒を代表し、歴史に残したい静岡の名酒として、「開運 特吟」を挙げたいと思います。
香り高く、喉越しがスマートな辛口。香りでバランスを取っているような吟醸酒よりもはるかにレベルの高い特別本醸造。静岡の本醸造系の高さを証明しているかのような名酒です。
米を磨き、技を磨いてレベルアップした静岡酒の歴史がこのお酒に宿っています。「開運の特吟」、歴史に残したい静岡の名酒であります。
開運のラインナップの中では地味な存在ですが、じっくり味わってほしい一本であります。
次回は原料米でレベルアップについて書きます。